英語をはじめとする多くの欧文表記や文章記述の際、アルファベットと数字のフォントは膨大な数にのぼります。
アルファベットのフォントデザインは、古代ローマの碑文などにルーツを持つものなど非常に長い歴史を持ち、今日までに無数のバリエーションを生み出すに至りました。
各フォントデザインにはそれぞれに適した用途がありますが、最も重要なのは、アルファベットと数字のフォントの使用について、タブー事項も含めた厳格で緻密なルールが存在することです。
例えば、文章中と図表では違うフォントで表示させることや、うろこが付いているか否かで使い分けることなど。
このルールはほぼ世界標準なので、特にデザイン関係のプロフェッショナルであれば必ずおさえておくべき知識と言えるでしょう。
また、PCにも多くの英字フォントが標準搭載されていますが、選び方のポイントをおさえれば、より見栄えの良い英文の文書を作成することができるのです。
英文フォントは、遠くからでも目に留まる視認性、読みやすさの指標となる可読性、誤読の可能性が少なく正確に読める判読性うち、用途ごとに重視される基準で選びます。
セリフ(文字先端の飾り。ウロコとも呼ばれる)が付いた細い文字は長文でも読みやすいため、新聞や雑誌、書籍などに用いられます。
一般的なものとしては、格調高く整然とした雰囲気のGaramond、Times New Romanなどが有名です。
学会資料や論文などで長い英文(欧文)の文書を作成する場合は、読みやすさと美しさのほかに、強調部分のための太字や引用部分のための斜体字にも対応したフォントが適しています。
中でもGaramondは長文が読みやすく、斜体やラテン文字、古い数字表記などの特殊な文字にも対応しているため、使い勝手の良さで広く普及しています。
その他、Palatinoなども汎用性の高い定番フォントです。
プロジェクターを使用するプレゼン資料などの場合は、遠くからでも視認性の高いシンプルなサンセリフ(セリフが無い)タイプのフォントがおすすめです。
可読性よりも視認性を重視する看板やポスターなどの広告表現、雑誌タイトルなどには、セリフ体のほか、サンセリフ(セリフが無い)の太い文字デザインによる多彩な表現が見られます。
デザイン性を優先したがゆえに判読性でハンディを持つフォントもあるので、これらは目的に沿って適切に使い分けるセンスが要求されます。
判読性に優れた太字フォントにはSegoe UI、Helvetica、Calibriなどがあります。
また、セリフのあるモダン・ローマン体のDidot、Bodoniなどは優美さや上品さを感じさせるので、女性誌のタイトルや高級化粧品、高級洋菓子などのロゴによく使われています。
アルファベットと数字、記号だけで成り立つ欧文(英字)フォントは、1バイト分に当たる256文字(8ビット、2の8乗=256文字)以内で作成することができることから、1バイトフォントと呼ばれます。
1バイトで作られた128文字の英字は、現在でも世界共通のコンピュータの基本文字です。
これに対し、約7000もの漢字が必要な日本語のフォントは、英字の2倍、つまり2バイトフォント(2バイト=65,536文字)で作成されています。
1バイトフォントである英字は半角、かなや漢字などの和文文字は2バイトなので全角、と考えれば分かりやすいのですが、文字ピッチを調整するプロポーショナルフォントが普及した現在では、この表現はあまり意味がなくなりました。
但し、海外版OSで1バイトフォントと2バイトフォントを混在させると、文字化けや重なりなどで正しく表示されないことには注意が必要です。